制度改正の基本的考え方

社員総会の議事録

1.議事録作成の必要性と機能
  一般法人・公益法人に移行後の社団法人は,社員総会で議事を行った際に,議事録を作成する必要があります(法人法57条)。
社員総会の議事録とは,社員総会の議事の経過の要領や議決内容を記録した書面です。
このような議事録が作成されるのは,後で社員総会の決議の効力が争われた場合の重要な証拠となるからです。また,社員総会議事録は,一定の場合には,登記申請における添付書類ともなります。

2.議事録への署名又は記名押印の要否
  ところで,社員総会議事録について,出席理事等の署名又は記名押印が必要なのでしょうか。
  社員総会議事録の署名・押印の要否及び主体については,理事会の議事録の場合と異なり(法人法95条3項参照),規定がありません。
  これは,社員総会議事録に対する出席理事等による署名又は記名押印がなされたとしても,理事会議事録の場合とは異なり,法的な意味がない(法人法95条5項参照)ことから,規定が置かれなかったものと考えられます。
すなわち,社員総会議事録に署名や記名押印がなされるのは,その議事録の真正性を担保するためであるところ,社員総会議事録に署名や記名押印をすることで,偽造や真正性の問題が解消されるかは,理事会の場合とは異なり,程度問題にすぎないからです。
  したがって,社員総会議事録について,出席理事等の署名又は記名押印は,法律上は必要でないと考えられます。

3.新法下での対応
  このように,社員総会に出席した理事が記名押印しなかったとしても,議事録の効力には影響はないと考えられます。
  しかし,社員総会議事録が,社員総会の議事の経過の要領や議決内容を立証する証拠として重要であり,その保全の必要性が認められることからすれば,社員総会議事録に署名または記名押印がなされることが(特に法人の運営者である理事の方にとって),望ましいものといえます。
そこで,社団法人の定款において「〔社員総会の〕議長及び出席した理事は、前項の議事録に記名押印する。」などと規定し,議長や理事の記名押印を確保することが考えられます。

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新公益法人制度を理解するための5つの視点(その5)

6.柔軟性

先輩弁護士A

「最後に柔軟性の視点がある。これは、活動状況の変化に応じて、法人の位置付けが柔軟に見直されるということだ。公益性を失った法人が公益法人として固定的に存続していた従来の弊害を除去し、制度への信頼を確保するためだね。」

新人弁護士B

「この見直しは、行政庁による監督により行われるわけですね。」

先輩弁護士A

「そう、報告徴収・立入検査・勧告・命令・認定の取消し等や変更の認定、定期的な事業報告等により、事業の適正な運営を確保するために監督が行われる。」

新人弁護士B

「従来の監督とは異なるのでしょうか。」

先輩弁護士A

「前に述べた内閣府の『監督の基本的考え方』によれば、監督についても裁量的なものから法令で明確に定められた要件に基づくものに改められたことや法律でガバナンスや情報開示について詳細に定められたことを踏まえて、監督に望むとしている。これは、ガバナンスにより確保されている自律性を尊重しつつも、透明性により開示される情報を基に、適正な運営を確保するために迅速かつ厳正に対処することを示したものだ。基本的に制度改革の趣旨を反映した適切な姿勢といえるだろう。」

新人弁護士B

「こうやってみると、柔軟性の視点は、自律性や透明性などの視点と深く関係していますね。」

先輩弁護士A

「そうだね。自律性が平常時に常に求められるのに対し、監督は公益法人のあり方を事後に柔軟に見直すものとして適宜厳しく行われる。ただ、その監督における判断は、法令に定められた客観性を有した基準に基づいていなければなければならないし、そのためには法人の実態把握が不可欠であるから、透明性はその基礎になる。このように柔軟性の実現には他の視点が密接に関わっていることは、意識しておいたほうがよいだろう。」

新人弁護士B

「わかりました。」

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新公益法人制度を理解するための5つの視点(その4)

5.透明性

先輩弁護士A

「もうひとつ重要な視点に透明性がある。これはどういう視点かな。」

新人弁護士B

「はい、法人運営や活動が、広く国民に分かりやすいものとなるように、情報開示をしていくということです。」

先輩弁護士A

「そうだね。公益法人においては、目的・事業の公益性や活動が寄附等で支えられていることなどの特殊性があることから、特に広く国民にわかりすい形で情報開示を行うことが求められているんだ。」

新人弁護士B

「具体的にはどういうことでしょう。」

先輩弁護士A

「たとえば、公益法人は、貸借対照表、損益計算書、事業計画書、財産目録等について、閲覧請求があった場合、請求者が誰であっても、正当な理由がない限り、その請求を拒むことはできないことなどが特徴的だろう。一般社団法人にはそのような規定はないからね。」

新人弁護士B

「どうして公益法人について透明性が重視されているのでしょうか。」

先輩弁護士A

「透明性を高めることにより、トレイサビリティー(追跡可能性)が高まる。そして、トレイサビリティーが高まると財産が適正に使われる可能性が高まる。結果として、公益活動に対する社会の信頼が高まるというわけだ。税制優遇を受ける公益法人であるからこそ、適正な運営によって財産が使われる必要があるため、透明性が特に重視されるんだよ。」

新人弁護士B

「国民の厳しい目にさらされるけれど、逆に信頼を得れば公益活動も健全に発展していくということですね。」

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新公益法人制度を理解するための5つの視点(その3)

4.客観性

先輩弁護士A

「客観性という視点もある。従来、公益性の判断については主務官庁の自由裁量により決定されていた。しかし、それでは民間の発想が公益活動に反映されにくく、民による公益の増進は実現されない。そこで、国民の意向を適切に反映した中立的機関である公益認定等委員会が実質的に公益性を判断することになった。そして、その判断の基準は裁量の余地の少ない客観的かつ明確な要件として法律に定められたんだ。」

新人弁護士B

「でも、従来から『法益法人の設立許可及び指導監督基準』という客観的な判断基準があったのではないでしょうか。」

先輩弁護士A

「確かに『指導監督基準』はあったが、法律に明文化されていない事項が多く、結局主務官庁の裁量が認められていた。この度の改革では、『指導監督基準』や他の法人法制の考え方なども踏まえつつ、判断基準のあり方を見直し、できるだけ裁量の余地を排除した客観的な基準を法律に明記したことに大きな意味があるんだ。」

新人弁護士B

「裁量が排除されたということは、裁判所の判断が一定程度及び、今後、不認定処分を取消訴訟などで争うことも選択肢として考えられるということでしょうか。」

先輩弁護士A

「そのとおり。公益性を否定されたことが公になると、以後、当該法人が寄附を集めにくくなるなど、事業活動に支障がでる可能性はある。執行停止の要件を満たすか否かなど、難しい問題があるにせよ、不認定処分を争うことも選択肢のひとつとして考えなければならないこともあるだろう。そういった意味でも、客観性の視点は重要なものといえるね。」

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新公益法人制度を理解するための5つの視点(その2)

2.簡便性

先輩弁護士A

「まずは、簡便性だね。これは主務官庁の許可制ではなく、定款作成と設立登記のみにより簡単に一般社団法人・一般財団法人を設立できるようになった(準則主義)ということだ。ではなぜ簡便性が必要なのかな。」

新人弁護士B

「うーん、簡単に法人を作れれば、やりたい公益活動がしやすいので…」

先輩弁護士A

「そうだね。先ほどの目的からすると、官の発想ではなく、民の発想・目線で行動できる非営利の法人を増やすことが、民による公益の増進につながる。そこで、認証主義などはとらず、官の関与を極力排除して、法人設立の簡便性を実現したんだ。」

新人弁護士B

「なるほど。」

3.自律性

先輩弁護士A

「簡便性と関連する視点が自律性だ。つまり、行政の関与を極力排除して、法人が自律的な運営を行うという視点だ。従来は、法人の運営についても主務官庁による事前の指示監督に服しており、ガバナンスに関する法整備が不十分だった。しかし、今回の改革で、市民からの信頼を得る適正な法人運営が自律的に行われるように、行政の事前の関与は極力排除され、営利法人と同様のガバナンスや内部統制などが求められることになった。」

新人弁護士B

「行政による事前チェックではなく、事後チェックに転換したということですね。」

先輩弁護士A

「そのとおり。行政庁の監督については『法律により法人のガバナンス(内部統治)および情報開示について詳細に定められたことを踏まえ、…法人自治を大前提としつつ、民による公益増進のため新公益法人が新制度に適切に対応できるよう支援する視点を持つ。』(内閣府『監督の基本的考え方』)」とされており、基本的に法人運営の適正は自身に委ねられることになった。」

新人弁護士B

「しかし、剰余金を構成員に分配することを目的としない非営利法人について営利法人並みのガバナンスが必要なんでしょうか。」

先輩弁護士A

「昨今の公益法人による不祥事に対する社会の反応を見てもわかるように、公益活動において、社会の信頼は営利法人以上に重要な要素だといえる。そして、法人が自律的に適正な運営をしてはじめて、民による公益活動について社会の信頼が得られるそうだとすれば、むしろ営利法人よりもガバナンスの必要性があるといえるのではないかな。」

新人弁護士B

「よくわかりました。」

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新公益法人制度を理解するための5つの視点(その1)

1. 新公益法人制度の目的と視点

先輩弁護士A

「今日からB君には公益法人チームに入ってもらおう。新しい公益法人制度については知っているかな。」

新人弁護士B

「はい、勉強してきました。」

先輩弁護士A

「それは素晴らしい。じゃあ、突然だけど、質問しよう。そもそも、この度公益法人制度が改革されたのはどうしてかな。」

新人弁護士B

「はい。ええと、従来の制度には、①許可制の下で主務官庁の裁量の幅が大きく、法人設立が簡単ではなかったこと、②裁量による公益性の判断基準が不明確であったこと、③すでに公益性を失った営利法人類似の法人も公益法人として存続していたこと、④公益法人による不祥事が生じていたことなど、多くの問題点があったからです。」

先輩弁護士A

「そうだね。従来の制度から生じていた弊害を除去するという消極的な理由は当然ある。では、もっと積極的な理由はなかったかな。」

新人弁護士B

「はい、今回の改革では、民間による公益活動の促進が目的とされています。」

先輩弁護士A

「そのとおり。少子高齢化時代が到来し、社会のニーズも多様化した今の日本においては、より機動性のある民間非営利部門による公益活動の促進が期待されている。財政状況の厳しい政府や、採算性が求められる営利部門では十分に対応できない分野があるからね。そこで政府も、官による公益から『民による公益の増進』という『大きな哲学の転換』(平成20年3月26日内閣委員会議事録・岸田国務大臣)を行ったんだ。」

新人弁護士B

「今回の改革には、単なる弊害除去にとどまらない積極的な目的があるということですね。」

先輩弁護士A

「そう、今回の改革は、従来の公益法人は、全く新しい考え方で制度をみていく必要があるという意味で非常に重要なものなんだ。」

新人弁護士B

「正直色々と細かい規定がたくさんあり、法人側としても理解するのが大変なんじゃないでしょうか。」

先輩弁護士A

「確かにそうだが、新公益法人制度は大きく捉えれば5つの視点から設計されている。その視点を持って各制度にあたっていけば、より理解しやすいはずだよ。その視点というのは、①簡便性、②自律性、③客観性、④透明性、⑤柔軟性の5つだ。これからひとつずつ説明するからB君も参考にするといい。」

新人弁護士B

「よろしくお願いします。」

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公益維持審査のシステム

【Q】
  公益認定後の監督のシステムについて教えてください。

【A】
  公益認定後の監督から取り消しに至るシステムは以下のとおりです。

  申 請  ⇒あくまでも予定に従った書類による形式的審査
   ↓
定 期 報 告⇒来年度の予定に従った書面による形式審査
                   ⇒実際の結果を報告書類による形式審査
   ↓
個 別 報 告⇒個別に必要な実際の結果の報告を求める実態審査
  質問 検査 ⇒実際の結果を質問検査権により実態審査
   ↓
  勧 告  
   ↓
  命 令
   ↓
  取 消(任意的、必要的)
*勧告事由と裁量的取消事由はほぼかぶっているため、勧告・命令・取消のいずれの処分をするかは行政庁の裁量によることになるため必ずしも段階を踏まないとならないものではない。

この一連の流れでみているものは、
 
公益認定の申請の段階で予定されていた事業内容の実態があるかどうか

ですので、
認定後の維持審査の方が厳しいことが予想されます。
そうすると、認定後も維持審査に向けて公益法人特有の公益維持システムを内部で作ることが重要であると思われます。

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新公益法人制度 Q&A

Q 公益法人の基礎にある非営利的組織とは何ですか

A 非営利的組織とは、社会の人々の幸福を増進し、社会が健全に発展することに貢献するために、政府や企業と異なった社会的責務を負う組織です。
政府も、企業も、それぞれ社会的責務を負う組織です。でも、社会の人々の幸福や社会の発展には、政府や企業だけが社会的責務を負うだけでは十分ではありません。
政府や企業の活動の限界を超えて、社会の人々の幸福や社会に発展のために社会的責務を負う機関として、民間の非営利活動をする組織が必要となります。それが、本来的には、公益法人の基礎にある非営利的組織です。

Q 非営利的組織の使命は何ですか

A 非営利的組織には、それぞれ独自の使命があります。ある意味では、それぞれの組織が、自らの使命を明確にする必要があります。そうすることで、それぞれの組織は自らの社会的責務を最大限に発揮することができるからです。
 非営利組織の使命を理解するために、具体例を取り上げてみます。(ドラッカー著「非営利組織の経営」ダイヤモンド社・6頁) 
・ アメリカのガールスカウトの使命
「少女たちが誇りと自信をもち、自分自身を尊重するようになる手助けをすること」
・ 救世軍の使命
 「落伍者の烙印を押された者を市民として立ち直らせること」
・ パブリックスクールの使命
「無作法な少年を紳士にすること」
・ 救急治療室の使命
「患者を安心させること」
 
Q 新公益法人制度の目的は何ですか

A 新公益法人制度の目的は、既存の公益法人制度を抜本的に見直し、今まで以上に、民間の非営利組織による活動を健全かつ活発にすることで、社会の健全な発展を図ろうとするものです。
 
Q 新公益法人制度の特色は何ですか

A 新公益法人制度の特色は、つぎの3つです。
 ①法人の設立を、従来の官の裁量的な許可から、容易に法人を設立できるように、準則主義という登記のみによる設立に変えたことです。つまり、民が自らの使命を自由に設定し、広い範囲で非営利的組織を設立することができるようになったのです。
 ②公益性の認定も、主務官庁という官の自由裁量から、民間の有識者による合議制の機関によるものに変わりました。非営利組織に公益性があるか否かの認定について、公正な判断が期待できる方向性を示したものといえます。
 ③法人の組織および運営に関して、会社法並みのガバナンスを導入されました。それによって、法人の運営が社会の期待に応えるように適正なものとなることが期待される方向性が示されました。

Q 既存の公益法人の移行・解散問題について、教えてください

A 既存の公益法人は、新公益法人制度の下で、すでに、特例民法法人と呼ばれています。
しかも、特定民法法人は、平成25年11月30日までに、新公益法人制度の下で、その種類の法人に移行するか、それとも解散するかの移行・解散問題という選択問題に迫られています。
その選択とは、以下の通りです。
① 公益社団法人・公益財団法人
② 一般社団法人・一般財団法人
③ 上記①か②を選択しない場合には、解散となります。

Q 移行問題で注意を要することは何ですか

A 新公益法人制度の下で、公益法人に移行することは大きなメリットがあります。公益法人になれば、税制の優遇は従来よりも大きくなりますし、社会的信用も大きなものがあるため、公益法人としての社会的使命を大きく果たすことができます。
その反面、公益性を認定する基準が厳格となりますが、公益性の認定の基準は必ずしも明確とは言えませんので、公益認定を受けることはそう簡単でない場合があることは想定できます。しかも、公益法人に対するガバナンスが従来よりも厳しいものがあります。公益認定の取消しや公益法人の役員の責任問題が生じる可能性があります。
したがって、公益法人を選択する場合には、公益認定に関して十分な準備が必要です。また、法律的な意味でのガバナンスに関する十分な対応が必要となりますし、その必須の前提として、理事等公益法人の役員の意識の改革が必要となります。
 一般法人に移行する場合にも、公益目的支出計画という公益事業等を継続する計画を遂行する必要があります。これについては、公益認定等委員会などによって監督されます。また、移行後は、従来なかった、会社法並みのガバナンスが必要となります。
 したがって、一般法人へ移行する場合にも、慎重な配慮と十分な準備が必要です。

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公益法人のこれから

 今回の公益法人制度改革は,100年に一度の大改正といわれています。 激動と変化が著しい時代ですが,100年もの長期にわたって変化のなかった 公益法人制度にも大きな変革が訪れようとしているのです。  公益的な活動の恩恵を社会に行き渡らせ,社会活動を活発化,円滑化すること が公益法人の使命です。  そのためには,公益法人が自律したガバナンスを持ち,透明性の高い財政基盤を確立する ことが求められています。  本サイトでは,そのような改革に直面する公益法人がどのようにこの荒波を乗り越えるか について,さまざまな視点から専門的な解決策を探るヒントを提供していきます。

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