役員の責任追及

内部統制(4)~「使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」

1.はじめに

今回は,法人の業務の適正を確保するために必要とされる「使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」(法人法施行規則14条4号)についてお伝えします。

2.内容

ここにいう体制とは,法人の事業活動について適用される法令の割り出し,発生する可能性のある法令・定款違反行為の把握やその防止のための体制をいい,コンプライアンス担当の職員・部署等の設置や,倫理規程・各種業務に関する規程などによる行動規範の制定,内部通報体制の整備などが該当します。

3.役員責任への影響

内部統制に当たって使用人の職務執行の適法性を確保することは極めて重要であり,また役員責任の存否の判断にも大きく影響してきます。

部署の設置や規程の整備も重要ですが,単に規程を作って終わりではなく,継続的に法令や職務の執行状況をチェックしていくことも重要です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

内部統制(2)~「理事の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」

1.はじめに
 昨日のブログでも,「一般社団法人の業務の適正を確保するために必要な」体制について触れさせて頂きました。
 このようないわゆる内部統制システムについては,「構築」「整備」「運用」の3つが必要とされています。
 「構築」とは,組織を作り人員を配置しマニュアル等の文書等を準備すること,です。
 「整備」とは,内部統制をデザインし,実施してもらうこと(業務へ適用すること)です。
 「運用」とは,コントロールが実際に機能していることを言います。

2.「理事の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」
 今日は,「理事の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」(法人法施行規則14条3号)について触れようと思います。
 同号の体制は,法人の運営のシステム面及び運営のプロセス面の双方において,職務の執行が効率的に行われることを意味します。
 具体的には,理事会運営規則や理事会付議基準を定め,それに従った理事会運営をしていることのほか,定例理事会の開催や,理事の職務分担理事会以外の重要な使用人の出席する会議の開催がなされていること等がこれにあたるものと考えられます。

3.オーダーメイドな体制の整備を!
  具体的にどのような体制を定めるかは,法人の規模や事業内容等によります。したがって,法人毎の実態に合わせた体制の整備をしていく必要があります。単に他の法人を真似するのではなく,オーダーメイドな体制の整備をしていくことが重要です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

監事の地位と責任

 特例民法法人から,公益法人・一般法人に移行する場合に,一見すると,監事の権限や地位に大きな変容がないようにも考えられます。
 しかし,一般法人法においては,監事の権能や義務等について,実は詳細な定めが置かれています。 例えば,一般法人法においては,計算書類及び事業報告等について,監事は監査することとされています(法人法124条1項2項)。この規定自体は,整備法61条1項2項の規定と一見すると似ています。しかし,一般法人法の規定では,監査の内容について「法務省令で定めるところにより」と委任がなされており,具体的な監査の内容等については,法務省令において詳しく定められています(施行規則35条~46条)。
 このように,監事は,法人の役員として,法人の運営が適正に行われるための必要な職責を担います。したがって,監事として選任する者には,一定の能力が必要と解されています。
 具体的には,
 ⅰ 法人の業務運営に一定の知見を有し,業務監査能力を備えている
 ⅱ 会計制度に一定の知見を有し,計算書類の監査能力を備えている。
 ⅲ 関係法令に一定の知見を有し,理事(会)の職務の執行(決定)等が法令に違反しないよう監視できる能力を備えている
ことが望ましいものとされています(FAQⅡ-1-③)。
 また,公益法人においては,監事に経理的基礎・技術的能力がある者を置くことが推奨されています(FAQⅤ-1-②)。
 公益法人・一般法人では,監事は様々な権能を有し,義務を負うことから,適切な能力を有する者が監事になるべく,法人においては監事の選任が重要となります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

法改正と経過規定

 今回は,森林組合の理事の森林組合法改正前の行為につき,経過規定に着目した上,法改正によって可能となった代表訴訟により責任を問えることが認められた事例(*)をご紹介いたします。

1 事案
 本件は,A森林組合の参事であったBが,在任中にA森林組合の所得を隠したことで,A森林組合の平成元年度~6年度の簿外資産に対して延滞税及び重加算税が追徴課税されたことにつき,A森林組合の組合員であるXが,当該期間にA森林組合の理事であったYらに対し,森林組合法54条の準用する旧商法267条(株主代表訴訟)の規定により,債務不履行に基づく損害賠償を請求した事案です。
 Yらは,森林組合の理事に対する代表訴訟の制度は森林組合法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律(平成9年法律第30号)により認められた制度であるから,代表訴訟によって同法が施行された平成9年4月1日より前に役員であったYらの責任を追及することはできないと主張しました。

2 裁判所の判断
 裁判所は,改正後の森林組合法の規定は原則として同法施行前に生じた事項にも適用されることとされているから(森林組合法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律附則2条1項本文),Yらの上記主張を採用することはできないとし,代表訴訟を適法と認めました

3 ポイント
 法改正によって改正前に形成された権利義務やそれらを実現するための手続がどのような影響を受けるかについて,経過規定が置かれている場合があります。
 法人制度改革に際しても,法人法附則2において,法人法の規定を原則として法人法施行前に生じた事項にも適用する旨が規定されています。
 なお,特例民法法人については,法人法で新設された代表訴訟の規定の適用が排除される(整備法75条,法人法278条2項等)など,整備法によって多くの面で従前の扱いを継続する経過措置がとられています。

* 青森地裁 平成18年2月7日 平成16年(ワ)第271号

| | コメント (0) | トラックバック (0)

理事が脅迫されてした行為の責任

 今回は,株式会社の事例ではありますが,脅迫されて会社財産を不当に使用した取締役に善管注意義務違反に基づく責任が認められた事例(*0H18.4.10 最高裁判所第2小法廷 民事判例集60巻4号1273頁)をご紹介いたします。
 善管注意義務とは,「善良な管理者の注意をもって,委任事務を処理する義務」のことです(*1)。

1 事案
 本件は,暴力団関係者といわれるAが,X社の株式を大量に取得したうえ,X社の取締役Yらに対し,X社の信用やYらの生命に危害を加えることをほのめかして脅迫し,債務の肩代わり等,実質的に違法な利益供与(*2)にあたる要求を行ったところ,Yらが違法であることを認識しながらもAの要求に応じ,回収の見込みのない迂回融資をする等して,X社に巨額の損害を与えたという事案です。

2 最高裁判所の判断
 最高裁判所は,株主から,株主の地位を濫用した不当な要求がされた場合,会社経営者は法令に従った適切な対応をすべき義務を有すると判示しました。
 そして,本件において,Yらの行った回収の見込みのない迂回融資を善管注意義務違反と認めた上で,Yらが,Aの言動に対して,警察に届け出るなどの適切な対応をすることが期待できないような状況にあったということはできないから,Aの理不尽な要求に従って約300億円という巨額の金員をI社に交付することを提案し又はこれに同意したYらの行為について,やむを得なかったものとして過失を否定することはできないとし,Yらの損害賠償責任(*3)を肯定しました。

3 判例のポイント
(1)射程
 本件は株式会社の事例ですが,一般法人(*4)の理事も法人の運営や財産管理について善管注意義務を負う点は株式会社の経営者と同様です。
 そのため,善管注意義務違反にあたる役員の行為によって法人に損害が生じた場合,その行為が第三者の脅迫の結果として行われたものだとしても,当該役員に適切な対応をすることが期待できない状況にあるといえない場合,当該役員は責任を免れない,という点は,一般法人の役員責任についても参考になると考えられます。

(2)第二審との違い
 第二審では,融資の点について,外形的には善管注意義務違反があるとしながらも,脅迫の内容,当時のYらの心労,Yらが会社の信用等を考慮して融資を決定したことなどから,当時の一般的経営者として,Yらが融資を判断したことがやむをえなかったとして過失を否定し,Yらの責任を認めませんでした。
 これに対し,最高裁の判決は,「適切な対応をすることが期待できない状況」になかったと指摘し,過失を否定できないとして,Yらの責任を認めています。

4 一般法人の場合
 役員の善管注意義務違反によって法人に損害が生じた場合に当該役員が負う損害賠償責任(*5)についても,株式会社の場合と同様,役員が第三者の脅迫のために義務違反行為を行ったというだけでは,直ちに役員責任が否定されるわけではないと考えられます。
 本件判決中,「適切な対応をすることが期待できない状況」にあたれば免責されるのか,どのような状況がそれに当たるのかは明言されていませんので,事案によっては責任が否定される可能性もないとは言えませんが,いずれにせよ,役員が脅迫を受けた場合,適法かつ適切な対応を考えることが必要です。なお,仮に脅迫の結果要求に応じて金銭の支払いを約束してしまった場合でも,支払いを拒むことができる場合もあります。弁護士に相談してみましょう。

*1 民法644条。旧商法254条3項と現在の一般社団法人及び一般財団法人に
   関する法律(ここでは,「一般法人法」と呼びます。)64条,172条1項は,ともに, 
   民法644条を含む委任に関する規定を準用しています。
*2 利益供与とは会社が株主の権利の行使に関し財産上の利益の供与をする
   ことをいい(旧商法294条ノ2,現行会社法120条1項等),判旨は本件の
   融資が利益供与であることも認めています(詳細略)。
*3 当時の商法266条ノ5第1項。
*4 今回の記事では,公益法人を含め,一般社団法人・一般財団法人をまとめて
   「一般法人」と呼んでいます。
*5 一般法人法111条1項等

| | コメント (0) | トラックバック (0)

監事の任務懈怠責任

今回は、監事の業務監査に任務懈怠責任が認められた事例(最高裁平成21年11月27日第二小法廷判決)をご紹介いたします。

1 事案

本件は、農協の代表理事が、補助金の交付を受けて堆肥センター建設事業を行うことについて、理事会の承認を得ていたにもかかわらず、補助金の交付申請をしないまま、その後の理事会に交付金申請をしているとの虚偽の報告をするなどして同事業を進めましたが、結局資金が調達できず中止され、農協に損害が生じた事案です。

2 最高裁判所の判断

最高裁判所は、理事会での代表理事の言動からは、補助金の交付を受けて同事業を行えるかどうかに疑義があると伺える事情があったのだから、監事には補助金申請内容やこれが受領できる見込みに関する資料の提出を求めるなど、資金調達方法について調査・確認する義務があったのに、その任務を怠ったとして1000万円の損害賠償責任を認めました。

3 判例のポイント

 本件農協においては、代表理事が理事会に一任により業務執行するとの慣行がありました。
 二審では、その慣行に沿った形で事業を実行に移したという状況では、監事に裏づけ資料を求めるという義務を課すのは酷であるとして任務懈怠責任を否定する判断をしました。
 しかし、最高裁はこれを覆し、監事の職責は、上記慣行が存在しても、そのような慣行自体適正なものといえないから、これによって軽減されるものではないとして義務違反を認めました。
 この最高裁の判断からわかることは、近時の最高裁は、「今まで通りやっていた」ということは、役員責任を軽減する理由にはならないと考えているということです。
 今までのやり方が適正でないならば、適正なやり方に変えなければなりません。そのために各法人は、申請段階から従来の運営が適正か否かもう一度見直してみる必要があるといえるでしょう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

公益法人・一般法人の理事の報告義務

法律上、理事は様々な義務を負っています。
今回は、報告義務について確認してみようと思います。

1 誰が、誰に対し、どんな場合に報告しなければならないのか?

理事は、一般社団法人に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、その事実を社員に(財団法人及び監事を設置している社団法人は監事に)報告しなければなりません(一般法人法第85条・第197条)。

著しい損害を及ぼすおそれのある事実」とは、理事の違法又は不当な行為によるものか否かは関係なく、例えば以下のような場合です。
① 法人の重要な取引先や投資先の資金繰りが悪化し、倒産するおそれがある場合
② 営業所等が火災、地震等により罹災した場合
③ 理事が利益相反や競業取引をして、これにより法人が著しい損害を負う場合
④ 法人の役員や従業員が法人財産について多額の盗難や横領をしていた場合

法文上は報告義務があるのは「著しい損害」の場合であって、単なる「損害」の場合には報告義務はありませんが、その区別はケース・バイ・ケースといわざるをえません。そこで、実務上は、必ずしも「著しい損害」ではなくても、会社に損害を及ぼすおそれのある事実についても、理事が報告する仕組みを整えておくことが望ましいでしょう。

このような事実を発見した理事にとどまらず、その理事から事実を知らされ、かつ、いまだ発見した理事が報告をしていないことを知っている理事もこの報告義務を負います。

報告の方法は口頭でも書面でもメール等でも構いません。また、株主や監事が複数いる場合も、適切な者を一人選んで報告すれば足ります。

理事がこの報告義務を果たさなければ、任務懈怠として、会社に対して損害賠償責任を負います(同法111条1項)。また、第三者に対する責任も生じます(同法118条)。

2 なぜ、報告義務を負うのか?

理事がこのような報告義務を負うのは、自らは法人の業務執行に直接関与できず、理事の業務執行をチェックする上で重要な情報を入手することが困難な社員や監事などが、実効性のある監督を実施し、会社の損害を未然に防止できるようにするためです。
つまり、理事の報告義務は、社員による検査役選任の申立て(同法86条)、差止請求(同法88条)、監事による理事会への報告(同法100条、197条)、差止請求(同法103条1項)など、社員及び監事の重要なガバナンス上の権限行使の前提となるものとして、重要なものであるといえます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

〔鳥飼総合法律事務所〕公益法人・一般法人向け無料セミナーを開催いたします(ガバナンス視点の申請)

 12月7日から東京・埼玉の各会場でガバナンス視点の申請をテーマに無料セミナーを順次開催いたします。(12月7日東京会場は満員のため申込受付を終了いたしました)

 新公益法人制度は、公益法人・一般法人が真に社会から期待され尊敬される存在となるチャンスです。
 移行申請に潜んでいるガバナンス不在による様々な法的リスクを認定・認可後に顕在化させないために申請段階から意識をしておかなければならないこととは何かについて、わかりやすくご説明いたします。

 ご興味をお持ちの方は、鳥飼総合法律事務所公益法人移行申請ホームページからお申込みください。
http://kouekihoujin-santa.jp/contact/

【テーマ】

『 移行認定・認可申請にも必要なガバナンス視点 』
~申請後に泣かないようにするために~

【セミナー内容(予定)】

1 社会から尊敬される公益法人・一般法人への道
    監督型運営から自律的経営へ
2 移行申請に潜むガバナンス不在による“見えないリスク”
(1)不認定・不認可のリスク
(2)認定・認可後の取消等のリスク
(3)課税庁による更正処分等のリスク
(4)理事等の役員の法的責任・代表訴訟による責任追及のリスク
3 手遅れにならないため、移行申請前から準備が必要なガバナンス
4 手遅れにならないための移行申請の進め方とは?

【特典】

セミナー当日、各参加団体(法人・事務所等)ごとに、本2冊進呈いたします。

新公益法人制度における公益認定と役員の責任 
    鳥飼総合法律事務所所長弁護士 鳥飼重和編著  商事法務

公益認定に迷わないためのガイドライン
    鳥飼総合法律事務所所長弁護士 鳥飼重和編著  商事法務

【日程・会場】

東 京 会 場
2010年12月7日(火) (12月7日は満員のため申込受付を終了いたしました)
 13:30~16:30(13:15受付開始)アルカディア市ヶ谷 7階
2011年1月13日(木)
 13:30~16:30(13:15受付開始)アルカディア市ヶ谷 4階

埼 玉 会 場 (埼玉りそな銀行共催)
2010年12月14日(火)
 13:30~16:30(13:15受付開始)埼玉りそな銀行さいたま営業部(本店) 2階大会議室
2011年1月14日(金)
 13:30~16:30(13:15受付開始)埼玉りそな銀行さいたま営業部(本店) 2階大会議室

| | コメント (0) | トラックバック (0)

公益法人・一般法人は代表訴訟にどう対応すればよいか ~不提訴理由書制度の影響(2)~

4 実務的な影響


 前回触れました不提訴理由書に求められる記載内容に着目すると、法人が代表訴訟に対して実務的にどのように対応しなければならないかが見えてきます。

(1) 迅速な調査が必要

 前回示したとおり、不提訴理由書には、ア)調査時期についての記載が必要です。これにより、実際に不祥事が発生してからどのくらいの期間が経過してから監事等が調査を開始したかがわかります。
 とすると、法人としては、株主から提訴請求を受けるまでもなく、役員による不祥事が発覚したらできるだけ早く調査を開始するという体制が必要だということになります。なぜなら、不祥事発覚後相当期間が経過したにもかかわらず提訴請求を受けてようやく調査を開始したということになれば、理事・監事等の職務怠慢と判断されかねないからです。

(2) 正確かつ公正な調査が必要

 ウ)判断の基礎とした資料の標目の記載からは、何がわかるでしょうか。
ここでいう「資料」とは、当該理事に任務懈怠責任がないことを基礎付けるものですが、この「標目」のみの記載で足り、どのような内容の資料であるかまでは記載する必要はありません。
 しかし、標目のみの記載であっても、代表訴訟においては重要な意味を有します。
それは、代表訴訟を提起しようとする社員が、従来知りえなかった情報(会社内部の資料の存在等)を知ることができるという点です。
 これにより、原告社員は裁判所に文書提出命令の申立てをし、これが認められれば社員は会社内部資料等を入手することができます。もし、この資料を精査した結果、内容に矛盾が見つかったり、資料の真正が疑われる場合は、役員の責任を否定するはずの資料が、役員にとって不利に働く証拠になります。
 このように、法人としては、将来、証拠として使われる可能性があることを認識した上で、正確な資料に基づいて役員の責任を判断をした上で、不提訴理由書を記載する必要があり、馴れ合いによるいい加減な調査は許されません。

(3) まとめ

 以上のように、公益・一般社団法人にも代表訴訟が導入されたことで、社員から提訴請求がなされる前の段階で、法人側が素早くしっかりとした調査をすることが必要となりました。つまり、不提訴理由書制度は、役員の不祥事の可能性が発覚した場合の法人の対応について、訴訟を見すえた慎重かつ適切な対応を促すという意味で、実務的な影響を及ぼす重要な制度であることを理解しておく必要があります。

 そして、このようなしっかりとした調査が行われるのならば、役員の責任が明らかになりやすくなるという影響まで考えられます。役員の任務懈怠責任が明らかになれば、法人は自ら当該役員の責任を追及する必要がでてくるでしょう。

今後、代表訴訟の利用がそれほど多くないという事態も考えられますが、それは必ずしも役員の責任が追及されることが少ないことを示すものとはいえない(法人自ら役員の責任を追及せざるを得ない場合も考慮する必要がある)といえるでしょう。

 
 なお、不提訴理由書の書き方によっては、裁判で有利又は不利に働く可能性があるので、不提訴理由書の記載については、専門家の協力を得ながら、慎重に検討する必要があります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

公益法人・一般法人は代表訴訟にどう対応すればよいか ~不提訴理由書制度の影響(1)~

1 どんな実務上の影響があるか
 この度の新公益法人制度改革で代表訴訟と共に不提訴理由書制度が導入されました。

 この不提訴理由書制度は、重要な手続きであり、実務上、以下の影響がありえます。

 (1)理事の任務懈怠責任が明らかになりやすくなる。
 (2)監事等は、理事の不祥事が発覚した場合に速やかに調査を開始する必要がある。
 (3)代表訴訟を提起する社員等は、会社の内部資料等の証拠を入手しやすくなる。
 (4)不提訴理由書は、訴訟においてその記載の仕方により有利にも不利にも働きうる。

 影響の詳細については、次回説明しますが、その前提として、不提訴理由書制度の概要と記載内容についてまず説明しようと思います。

2 不提訴理由書制度とはどんなものか
 一般法人法では、社員は法人に対して役員などの責任を追及する訴えの提起を請求することができます(同法278条1項)。
 法人がその請求から60日以内に責任追及の訴えを提起しない場合には、その請求をした社員に対して、法人はその理由を書面その他の方法で通知しなければなりません(同法同条3項)。これが不提訴理由書制度です。

3 不提訴理由書には何を記載すればよいか
 不提訴理由書には以下の点を記入します(同法施行規則86条)。
  ① 法人が行った調査の内容(判断の基礎とした資料を含む)
  ② 請求の対象となった理事などの責任の有無についての判断
  ③ 請求の対象となった理事などに責任又は義務があると判断したのに提訴しない場合は、その理由

 そして、会社法の不提訴理由書制度に関して、会社法の立案担当者は、①調査の内容には
  ア)調査の時期
  イ)調査を行った者
  ウ)判断の基礎とした資料の標目
  エ)調査方法
  オ)調査により判明した事実等
を不提訴理由書に記載する必要があるとしています。

(「法人は代表訴訟にどう対応すればよいか ~不提訴理由書制度の影響(2)~」に続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)