内部統制

公益認定の取消しについて

公益認定の取消しに関しては,認定法29条1項に必要的取消事由について,同条2項に裁量的取消事由について定めがあります。

同条1項3号によれば「命令に従わない」ことは必要的取消事由に当たります。

一方,同条2項各号(裁量的取消事由)に該当すると疑うに足りる相当な理由がある場合には,裁量的に勧告がされ,この勧告に従わなければ裁量的に勧告に係る措置をとることの「命令」がなされます。
つまり,裁量的取消事由に該当する場合には,勧告・命令という過程を経て,必要的取消事由が生じてしまう場合があるということです

裁量的取消事由には,「法令または法令に基づく行政機関の処分に違反したとき」が含まれます。

そして,公益法人へ移行した後に公益認定が取り消されると,公益法人から一般法人になり,公益目的取得財産残額に相当する額の金銭について贈与をしなければならなくなるという重大な不利益が発生します(認定法30条,同規則47条~51条参照)。

そのため,法人はあらゆる法令に違反することのないよう注意し,勧告がなされた場合には速やかに是正することが望ましいと言えます。

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内部統制(4)~「使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」

1.はじめに

今回は,法人の業務の適正を確保するために必要とされる「使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」(法人法施行規則14条4号)についてお伝えします。

2.内容

ここにいう体制とは,法人の事業活動について適用される法令の割り出し,発生する可能性のある法令・定款違反行為の把握やその防止のための体制をいい,コンプライアンス担当の職員・部署等の設置や,倫理規程・各種業務に関する規程などによる行動規範の制定,内部通報体制の整備などが該当します。

3.役員責任への影響

内部統制に当たって使用人の職務執行の適法性を確保することは極めて重要であり,また役員責任の存否の判断にも大きく影響してきます。

部署の設置や規程の整備も重要ですが,単に規程を作って終わりではなく,継続的に法令や職務の執行状況をチェックしていくことも重要です。

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内部統制(3)~「損失の危険の管理に関する規程その他の体制」

段々と暖かくなってきましたが,同時に,朝と夜の気温差も激しくなってきました。
風邪などひかないよう,気を付けたいですね。

今回は,リスク管理について御説明します。
法人法90条4項5号,法人法施行規則14条3号では,「損失の危険の管理に関する規程その他の体制」の整備が業務の適正を確保する上で必要であるとされています。

「損失の危険の管理に関する規程その他の体制」の整備の内容としては,発生する可能性のあるリスクの把握やリスク発生防止のための仕組みについて規定するリスク管理規程研修制度有事の対応マニュアルの作成などが考えられます。

法人の活動に伴いどのようなリスクが発生するかは,法人の活動内容に大きく左右されます。たとえば,金銭の貸し付けを行う法人であれば貸し倒れのリスクが生じるでしょうし,機械類を扱う法人では機械類の事故などのリスクが生じるでしょう。
どの段階でどのようなリスクが生じるかを検討するには,業務のプロセスをフロー図にすることが有効です。

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内部統制(2)~「理事の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」

1.はじめに
 昨日のブログでも,「一般社団法人の業務の適正を確保するために必要な」体制について触れさせて頂きました。
 このようないわゆる内部統制システムについては,「構築」「整備」「運用」の3つが必要とされています。
 「構築」とは,組織を作り人員を配置しマニュアル等の文書等を準備すること,です。
 「整備」とは,内部統制をデザインし,実施してもらうこと(業務へ適用すること)です。
 「運用」とは,コントロールが実際に機能していることを言います。

2.「理事の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」
 今日は,「理事の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」(法人法施行規則14条3号)について触れようと思います。
 同号の体制は,法人の運営のシステム面及び運営のプロセス面の双方において,職務の執行が効率的に行われることを意味します。
 具体的には,理事会運営規則や理事会付議基準を定め,それに従った理事会運営をしていることのほか,定例理事会の開催や,理事の職務分担理事会以外の重要な使用人の出席する会議の開催がなされていること等がこれにあたるものと考えられます。

3.オーダーメイドな体制の整備を!
  具体的にどのような体制を定めるかは,法人の規模や事業内容等によります。したがって,法人毎の実態に合わせた体制の整備をしていく必要があります。単に他の法人を真似するのではなく,オーダーメイドな体制の整備をしていくことが重要です。

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理事会運営規則を作成することの意味

1.理事会運営規則とは何か
 理事会とは,すべての理事によって組織された会議体で(法人法90条1項),法人の業務の執行の決定や,理事の職務の執行を監督します(同2項)。
 理事会運営規則とは,理事会の運営に関する規則のことをいい,多くの場合理事会が自ら制定します。理事会運営規則を予め定めておくことで,理事会の運営が効率的になり,ひいては法人の業務執行を円滑にすることができます。

2.なぜ理事会運営規則を定めるのか
 では,なぜ理事会運営規則に記載するような内容を,定款に定めないのでしょうか。
確かに,定款において理事会の運営に関する事項を規定しておくことも考えられます。
しかし,定款の変更をするための社員決議は,総社員の半数以上で,総社員の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合)以上に当たる多数をもって行う必要があり,その要件が厳格です(法人法146条,49条2項4号)。そのため,理事会の運営方法について,全て定款で定めておくと,運営方法の変更を困難にしてしまいます。
そもそも,理事会の運営については,その決定権限が理事会自身にあります。そうであるならば,その運営上のルールも理事会自身が決めることが本来的です。加えて,規定の形にまとめて整理することで,理事会の運営のルールが明確となります。
したがって,理事会の運営については,理事会によって定められた理事会運営規則等に規定することが望ましいものと考えられます。

3.理事会規則の策定
  以上のように,理事会の運営の効率化及び法人の業務執行の円滑化のために,理事会運営規則を定めるのが望ましいでしょう。どのような規定を置くかは,法人の実態にあわせて考える必要があります。
  理事会運営規則の規定等にお悩みの方がいらっしゃいましたら,是非,当事務所までご相談ください。

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社員総会の議事録

1.議事録作成の必要性と機能
  一般法人・公益法人に移行後の社団法人は,社員総会で議事を行った際に,議事録を作成する必要があります(法人法57条)。
社員総会の議事録とは,社員総会の議事の経過の要領や議決内容を記録した書面です。
このような議事録が作成されるのは,後で社員総会の決議の効力が争われた場合の重要な証拠となるからです。また,社員総会議事録は,一定の場合には,登記申請における添付書類ともなります。

2.議事録への署名又は記名押印の要否
  ところで,社員総会議事録について,出席理事等の署名又は記名押印が必要なのでしょうか。
  社員総会議事録の署名・押印の要否及び主体については,理事会の議事録の場合と異なり(法人法95条3項参照),規定がありません。
  これは,社員総会議事録に対する出席理事等による署名又は記名押印がなされたとしても,理事会議事録の場合とは異なり,法的な意味がない(法人法95条5項参照)ことから,規定が置かれなかったものと考えられます。
すなわち,社員総会議事録に署名や記名押印がなされるのは,その議事録の真正性を担保するためであるところ,社員総会議事録に署名や記名押印をすることで,偽造や真正性の問題が解消されるかは,理事会の場合とは異なり,程度問題にすぎないからです。
  したがって,社員総会議事録について,出席理事等の署名又は記名押印は,法律上は必要でないと考えられます。

3.新法下での対応
  このように,社員総会に出席した理事が記名押印しなかったとしても,議事録の効力には影響はないと考えられます。
  しかし,社員総会議事録が,社員総会の議事の経過の要領や議決内容を立証する証拠として重要であり,その保全の必要性が認められることからすれば,社員総会議事録に署名または記名押印がなされることが(特に法人の運営者である理事の方にとって),望ましいものといえます。
そこで,社団法人の定款において「〔社員総会の〕議長及び出席した理事は、前項の議事録に記名押印する。」などと規定し,議長や理事の記名押印を確保することが考えられます。

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求められるガバナンス―職務分掌規程の整備から

  公益法人制度改革が進む中で、公益法人・一般法人にもガバナンスが必要と言われています。しかし、公益法人・一般法人に求められるガバナンスに関する具体的な内容は何かについては、イメージがなかなか湧きにくいところがあるかと思います。そこで、公益法人・一般法人に求められるガバナンスの1つである規程の整備、本日は、職務分掌規程について簡単に述べさせていただきます。

 ガバナンスとは、ルールを遵守しながら、法人の事業を運営することです。法人ごとに事業内容が違うのでガバナンスとして求められる規程の整備は、法人ごとに異なります。しかし、共通する部分も多くあります。その1つが職務分掌規程です。
 こんなケースをイメージしてみて下さい。事業の運営が失敗してしまった場合、また、従業員が事業の運営に関する事業資金を横領した場合です。事業は、常にうまくいくとは限りません。また、従業員に魔が差さないとは限りません。多くの法人では、これらは起こり得るケースと言えるものでしょう。
  これらのケースで、職務分掌規程は、どのように機能するのでしょうか。前者であれば、職務分掌規程がなければ、各理事の担当する事業は何かが不明になり、責任の所在がわかりません。そのため、全理事が責任追及される可能性があります。ここからは、理事の責任を限定し、理事を守る機能を果たすことがわかります。また、後者であれば、職務分掌規程がなければ、従業員の行為が横領にあたるか否かの立証が難しくなり、ひいて横領した従業員の責任追及ができなくなる可能性があります。そのため、理事の管理監督責任の問題が生じ得ます。ここでは、理事の管理監督責任を全うする機能を果たすことがわかります。
  たかが、職務分掌規程。されど、職務分掌規程。これらの問題が実際に生じた場合、その問題解決のための前提として、ガバナンスの1つである職務分掌規程は必須です。これを具備していないケースでは、理事は、責任追及される可能性すらあり得ます。ガバナンスとは、その場限りのアドホックな対応から、ルールに基づく運営に変えていくことを指します。ルールに基づくことで、理事にとっても、従業員にとっても、誰にとっても、公平・公正・透明な対応が可能になるのです。そのことが公益法人制度改革の中で求められているガバナンスの一内容と言えるでしょう。

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理事・監事の構成

 公益認定の要件の一つに,理事・監事の構成があります。
他の同一の団体(公益法人を除く)と一定の密接な関係にある理事(または監事)の合計数が理事(または監事)の総数の三分の一を超える場合,公益認定を受けることができません(認定法5条11号)。
 この基準は,公益法人が他の同一の団体の利益に基づいて運営がなされることを回避するためのものです。

 「他の同一の団体」に当たるかどうかは,人格,組織,規則などから同一性が認められる団体ごとに判断されます(ガイドライン)。基本的には法人格を同じくする単位で考えますが,国の機関の場合,当該法人の目的,事業との関係において利害を同じくする範囲が「他の同一の団体」に当たると考えられます。
 したがって,国の機関については,一般的には事務分掌の単位である省庁単位でしょうが,法人の目的,事業が国全般に関係する場合には国の機関全体で考えることとなります(FAQ問IV-2-①)。

 なお,認定法5条11号によれば「他の同一の団体」から「公益法人に準ずるもの」として政令で定めるものを除くこととされていますが,この「公益法人に準ずるもの」の定めは今のところありません(平成23年2月7日現在)。

 「密接な関係にある者」としては,当該他の同一の団体の理事以外の役員,業務を執行する社員,当該他の同一の団体が法人でない団体である場合の代表者または管理人,国の機関など一定の特殊な団体の職員が列挙されています(認定法施行令5条)。

 「合計数」は,「他の同一の団体と一定の密接な関係にある理事または監事」が複数いることを前提に,その合計数を問題とする趣旨です。したがって,監事が一人の場合や,監事が二人の場合に別の団体から一人ずつ監事を受け入れた場合は「合計数」が観念できないため,認定法5条11号の要件に違反することにならないとされています(FAQ問IV-2-②)。

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社員総会等における理事の選任方法

 社員総会において,複数の理事を選任する場合において,その選任議案を採決する際には,
 1)理事の選任議案を社員総会または評議員会(以下,「社員総会等」と言います。)で一括で決議する方法,
2)理事の選任議案を各々決議する方法
が考えられます。
 ガバナンスの観点からは,本来,1人1人の理事の選解任ごとに賛成又は反対の表明をすることができるべきであって,全議案についてすべて賛成かすべて反対かという投票を強制することは望ましくなく,候補者ごとに決議する方法を採るような形にするべきです。
 そこで,法人法のもとでは,定款において,社員総会等の議事の運営方法に関する定めとして,「理事の選任議案の決議に際し候補者を一括して採決(決議)すること」を一般的に許容する旨の定めを設けることは許されないものと考えられています(「移行認定のための「定款の変更の案」作成のご案内」10頁注9,同40頁注12)。
 かかる定めが定款に置かれていることは,移行認定・認可における定款審査で不認定・不認可の対象とされていますので注意が必要です。

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理事が脅迫されてした行為の責任

 今回は,株式会社の事例ではありますが,脅迫されて会社財産を不当に使用した取締役に善管注意義務違反に基づく責任が認められた事例(*0H18.4.10 最高裁判所第2小法廷 民事判例集60巻4号1273頁)をご紹介いたします。
 善管注意義務とは,「善良な管理者の注意をもって,委任事務を処理する義務」のことです(*1)。

1 事案
 本件は,暴力団関係者といわれるAが,X社の株式を大量に取得したうえ,X社の取締役Yらに対し,X社の信用やYらの生命に危害を加えることをほのめかして脅迫し,債務の肩代わり等,実質的に違法な利益供与(*2)にあたる要求を行ったところ,Yらが違法であることを認識しながらもAの要求に応じ,回収の見込みのない迂回融資をする等して,X社に巨額の損害を与えたという事案です。

2 最高裁判所の判断
 最高裁判所は,株主から,株主の地位を濫用した不当な要求がされた場合,会社経営者は法令に従った適切な対応をすべき義務を有すると判示しました。
 そして,本件において,Yらの行った回収の見込みのない迂回融資を善管注意義務違反と認めた上で,Yらが,Aの言動に対して,警察に届け出るなどの適切な対応をすることが期待できないような状況にあったということはできないから,Aの理不尽な要求に従って約300億円という巨額の金員をI社に交付することを提案し又はこれに同意したYらの行為について,やむを得なかったものとして過失を否定することはできないとし,Yらの損害賠償責任(*3)を肯定しました。

3 判例のポイント
(1)射程
 本件は株式会社の事例ですが,一般法人(*4)の理事も法人の運営や財産管理について善管注意義務を負う点は株式会社の経営者と同様です。
 そのため,善管注意義務違反にあたる役員の行為によって法人に損害が生じた場合,その行為が第三者の脅迫の結果として行われたものだとしても,当該役員に適切な対応をすることが期待できない状況にあるといえない場合,当該役員は責任を免れない,という点は,一般法人の役員責任についても参考になると考えられます。

(2)第二審との違い
 第二審では,融資の点について,外形的には善管注意義務違反があるとしながらも,脅迫の内容,当時のYらの心労,Yらが会社の信用等を考慮して融資を決定したことなどから,当時の一般的経営者として,Yらが融資を判断したことがやむをえなかったとして過失を否定し,Yらの責任を認めませんでした。
 これに対し,最高裁の判決は,「適切な対応をすることが期待できない状況」になかったと指摘し,過失を否定できないとして,Yらの責任を認めています。

4 一般法人の場合
 役員の善管注意義務違反によって法人に損害が生じた場合に当該役員が負う損害賠償責任(*5)についても,株式会社の場合と同様,役員が第三者の脅迫のために義務違反行為を行ったというだけでは,直ちに役員責任が否定されるわけではないと考えられます。
 本件判決中,「適切な対応をすることが期待できない状況」にあたれば免責されるのか,どのような状況がそれに当たるのかは明言されていませんので,事案によっては責任が否定される可能性もないとは言えませんが,いずれにせよ,役員が脅迫を受けた場合,適法かつ適切な対応を考えることが必要です。なお,仮に脅迫の結果要求に応じて金銭の支払いを約束してしまった場合でも,支払いを拒むことができる場合もあります。弁護士に相談してみましょう。

*1 民法644条。旧商法254条3項と現在の一般社団法人及び一般財団法人に
   関する法律(ここでは,「一般法人法」と呼びます。)64条,172条1項は,ともに, 
   民法644条を含む委任に関する規定を準用しています。
*2 利益供与とは会社が株主の権利の行使に関し財産上の利益の供与をする
   ことをいい(旧商法294条ノ2,現行会社法120条1項等),判旨は本件の
   融資が利益供与であることも認めています(詳細略)。
*3 当時の商法266条ノ5第1項。
*4 今回の記事では,公益法人を含め,一般社団法人・一般財団法人をまとめて
   「一般法人」と呼んでいます。
*5 一般法人法111条1項等

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