収支相償

公益目的事業でもうけてはいけない?

 よく「公益目的事業で儲けてはいけないんですよね。」あるいは「儲けている場合は収益事業なるんですよね。」といったご発言を耳にすることがあります。

 確かに公益法人の場合,公益目的事業については,「当該公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込まれるものであること」という要件をみたすことが求められております(いわゆる収支相償)。

 しかし,収支相償は黒字が出たら満たされないというものではありません。黒字がでた場合には,それを将来,公益のために使うことを行政庁に示すことで(特定費用準備資金の積立,資産の取得・改良の資金の積立など),これをクリアする方法があります。
 したがって,黒字の事業であっても公益目的事業とすることをすぐに諦めるのではなく,当該事業の黒字を上記方法で整理して収支相償を満たすことが出来ないかを検討するのがよいでしょう。

 新制度は,公益性の認められる事業であるなら,むしろ黒字を出して,その利益を更に公益のために使うにはどのようにすればよいかを各法人が工夫することを求めているといえるのではないでしょうか。

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災害時に備えて積み立てる資金は、特定費用準備資金となるか。

地震大国と言われる日本では,大地震によって被災する可能性は低くありません。そのため,全国的に多数の施設を保有する法人において,被災に備えた積立を特定費用準備資金とするニーズがあります。

この点についてFAQは以下のような回答をしています。

すなわち,被災した場合に,保有する施設等の復旧にあてるために積み立てる資金は、その目的とした活動をいつ行うのかという具体的な見込みを立てることが一般的には困難であり、特定費用準備資金の要件を満たすことは難しい(問Ⅴ-3-④参照)というものです。

これは,特定費用準備資金の要件(認定法規則第18条第3項,ガイドラインⅠ7.(5)②参照)として5つ掲げられているところ,このうち「資金の目的である活動を行うことが見込まれること」という要件を満たすことができないケースが多いため,災害時に備える積み立てが特定費用準備資金と認められるケースは多くはないだろうという判断です。

ただ,FAQの記載においては,このような積み立てを特定費用準備資金とする可能性の一切を否定するものではなく,あくまで要件の充足性の問題ととらえています。
このほどの地震による甚大な損害に鑑みると,被災に備えた積立の扱いについては,今後,検討を要する問題であると思われます。

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収支相償について‐実現可能性のある計画的な特定費用準備資金の設定を

1 認定法上の規定について

 公益認定を受けるには,「公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込まれるものであること」(認定法5条6号)が必要です。つまり,公益目的事業について,収支がゼロかマイナスになることが見込まれることが要求されています。このことを収支相償といいます。
 収支相償が公益認定基準となっているのは,公益目的事業は不特定かつ多数の者の利益増進に役立つものであるところ,公益目的事業のサービス等の価格を無償又は安価に設定することによって公益目的事業を利用する人の範囲を可能な限り拡大することが求められているためです。
 ところで,認定法14条には,「公益法人は,その公益目的事業を行うに当たり,当該公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならない。」と記載されていますので,認定法上は,収支相償の厳格な適用を求める規定ぶりとなっています。

2 特定費用準備資金の当期積立額を費用とみなして判定

 しかしながら,収支相償を厳格に適用し,単年度で必ず収支がゼロか損失を計上しなければならないことになると,公益目的事業を継続的に実施することが困難になります。
 そこで,年度により収支変動があることや長期的な視野に立って事業を行う必要があることを考慮し,ガイドラインでは,特定費用準備資金の当期積立額(収益事業等の利益額の50%を超えて繰り入れる場合には上限あり)を費用とみなした上で収支相償を判断することとなっています(ガイドラインⅠ5)。
 特定費用準備資金とは,将来の特定の活動の実施のために特別に支出する費用(事業費又は管理費として計上されることとなるものに限られ,引当金の引当対象となるものは除く)に係る支出に充てるために保有する資金(当該資金を運用することを目的として保有する財産を含む)をいいます(認定法施行規則18条)。
 このように,将来の事業の拡充等に充てるための特定費用準備資金への積立てを費用とみなすこと等によって,中長期で収支が相償することが確認されれば,収支相償は満たされる扱いとなっています(FAQ・V-2-③)。つまり,単年度で必ず収支が均衡することまでは求められていないといえます。

3 実現可能性のある計画的な特定費用準備資金の設定を

 特定費用準備資金の当期積立額を費用とみなす扱いがなされていることにより,法人は財産を現在使うか,将来使うかの選択が可能となります。もっとも,特定費用準備資金の設定と取崩しについては,認定法施行規則18条3項,4項及びガイドラインⅠ7(5)の規定に服することになります。
 同ガイドラインによれば,たとえば,実施までに10年の長期を超えるような事業については,特定費用準備資金の積立対象として適当でないとされています。また,やむを得ない理由に基づくことなく複数回計画が変更され,実質的に同一の資金が残存し続けるような場合には,「正当な理由がない」ものとされ,資金は取り崩しとなるとされています。
 したがって,実現可能性のある計画的な特定費用準備資金の設定が必要になってくると考えられます。

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収益事業を行わない公益法人と収支相償

1 収支相償と事業の継続性

 収益事業を行わず、公益目的事業だけを行う法人がありますが、移行に際しては、十分な検討が必要です。
 なぜなら、公益目的事業に関して収支相償の要件を満たすために赤字としている場合、これをそのまま継続すれば、最終的には運転資金がなくなるからです。
 ですから、公益目的事業だけを行う法人は、事業を継続できるか否かについてよく検討したうえで、移行する必要があります。

2 経常外利益・指定正味財産

 1つ目のポイントは、収支相償の計算上の「収入」に含まれない収益があるか否かです。

 不動産や金融資産を多く保有している法人であれば、将来的にこれを売却するなどして、売却益等を経常外収益として処理すれば、経常外収益は収支相償の判定に際して、「収入」には含まれないため、運転資金を確保できるでしょう。

 また、寄附・補助金を受けている法人は、使途の指定を受け、これを指定正味財産として処理すれば、指定正味財産は収支相償における「収入」には含まれないため、効果があります(もちろん、使途は限定されてしまいます)。

3 特定費用準備資金・収益事業化

 2つ目のポイントは、剰余金(黒字部分)を他に持っていけるか否かです。

 公益目的事業に係る経常収益が経常費用を上回り剰余金が生じる法人は、特定費用準備資金への積立額などへと整理することで赤字を回避しながら収支相償を満たす方法があります。

 「公益認定等委員会だより(4)」(H22・9・1)の【質問1】への回答では、「収支相償については必ずゼロ以下にする必要はなく、プラス分については、法人内部の分配ではなく公益目的事業に再投下すればよい」とされています。
 具体的には、①特定費用準備資金、②資産の取得・改良の資金の積立、③当期の公益目的保有財産の取得、④個別事業に応じた判断があげられています。

 ただ、特定費用準備資金は資金の目的たる活動の具体的な特定、費用見積もりの合理性など厳しい要件を満たす必要がありますので、簡単な方法ではないことには注意が必要でしょう。

  公益目的事業のうちの一部にしっかりと収益を上げる事業が含まれている法人に関しては、その事業をわざと収益事業として申請する方法も考えられます。
  こうすると、指定正味財産の場合と異なり、一般的な収益について、毎年必要に応じた額を公益目的事業に振り替えることができます。
  この場合でも、みなし寄附として非課税の特典が享受できるので、税法上も問題はありません。

  もっとも、この方法については、その事業を収益事業にしたことにより、費用も収益事業のものとなりますので、それでも公益目的事業比率を満たすかどうかをきちんと検討しなければなりません。
  また、「公益目的事業のみを実施する法人は、適正な範囲内で収益を管理費に割り振ることができる」という例外的取扱いも受けられなくなりますので、その点の検討も必要です。

  結局、公益目的事業のみを実施する法人は、当該法人の事情に合わせて、上記の中から適切な方法を選択することになります。
 そのために十分な検討が必要です。

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